mattintosh note

どこかのエンジニアモドキの備忘録

【更新】EasyWineの頒布を再開しました

タイトルの通りですが、近々 EasyWine とその他派生物の頒布を無期限休止します。再開次期は未定です。これに伴い過去の関連記事も順次終了していきます。

pixiv BOOTH で有料にて頒布を再開しました。(2019年11月11日)

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BOOTH
www.pixiv.net
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pixivFANBOX

若干愚痴混じりなので気にされる方は読まずにブラウザを閉じることをおすすめします。

頒布休止の経緯

現状、macOS Catalina では Wine はまともに動きません。前々から次期 macOS では 32-bit アプリケーションが廃止されると言われていましたが、それを認識していない方が多く、正直なところ煩わしい問い合わせが増えました。

そもそも EasyWine の 64-bit 対応は Windows アプリケーションを対象にしている話であって macOS を対象にした話ではありません。macOS はもうかなり前から 64-bit で動いています。

頒布休止の理由のひとつが EasyWine の新規ユーザの抑制です。

ソフトウェアを最新の状態に保つということはセキュリティの観点からしても悪いことではないと思っています。しかし、今回の Apple の Catalina での対応はこれまでのソフトウェアアップデートとは大きく異なるものになりました。現時点ではまだユーザ数が少ないですが、例えば Sidecar などの Catalina 以降の macOS にのみ追加される新機能が増えることによって移行するユーザも増えていくでしょうし、Catalina がプリインストールされた Mac を手にするユーザも増えていくでしょう。(個人的には Mojave からフォークして別の OS が出来ればいいのになと思っていますが)

こうなってくると必然的に「EasyWine はいつ Catalina 以降に対応するのか?」という問い合わせが増えます。何時も何も Wine が対応しないのだから私としてはどうしようもありません。Catalina と Wine の事情についてご自分でお調べになった方は恐らくこのような質問はされないと思いますし、もしされたとしてもそれはきっと Wine が Catalina に対応したことをご自分で確認されてからなはずです。従ってこのような質問は Wine のことをあまりご存じない「よくわからないけど macOSWindows アプリケーションを動かせるアプリがあるらしい」と思っている新規の方々です。

期待していただけるのは悪いことではないのですが、こういう問い合わせってだいたい DM で来るんです(質問箱やマシュマロはもともとそういうサービスなのでOK)。正直なところ「なぜプライベートで送ってくるのか」と思っています。こういうのに答えていたら情報がパブリックに共有されず、いつまでも同じ問答を繰り返さなくてはいけません。それならいっそのこと新規のユーザ獲得を止めてしまおう、と思ったわけです。

もうひとつの理由は EasyWine が Wine プロジェクトの成長の妨げになっているのではないか?と思ったことです。

EasyWine を頒布することによってある程度の人が「素の Wine」を知ることも触れることもなく Windows アプリケーションを使っていたと思います。Wine を気軽に使えるように敷居を下げられたことは嬉しいですが、その反面、ユーザが素の Wine と直接向き合う機会を奪ってしまったとも思っています。もしかしたら EasyWine から使い始めて「今では自分で Wine をコンパイルしている」という方もいるかもしれません。

あとは今更という感じですが CrossOver for Mac の日本での販売の妨げになってしまっただろうな…と思っています。

「アプリのエンドユーザなんて根幹部分の開発している人の苦労なんざ知ったこっちゃないでしょ」というのが一般的な意見だと思います。自分も子供のときはそうでしたし。しかしこれでは Wine チームや CodeWeavers の方々に利益が生まれないですよね。素の Wine を使っていればバグレポートとかを送ってプロジェクトに貢献したりもするでしょうが、EasyWine を使っている場合はバグレポートどころか不満や文句を言われて終わりです。称賛も不満も直接言われることはほとんどないですがエゴサしてると不満ばっかりなんですよね。もともと Wine での動作が確認されていなかったりするのに「無能」とか「役立たず」とかボロクソ言われてるわけです。「そういうのって大抵 UnixMac のことなんてわかってない初心者なんだから気にする必要ないじゃん?もっと大人になれよ」っていう話ではあるんですけど。楽しく使ってますっていう書き込みはほとんど見かけないのできっと役立たずで無能なんでしょう。

最後の理由は独りで開発するモチベーションを維持できなくなったことです。

Twitter を見てるとよく「絵師さんにはちゃんと感想を伝えような!」みたいなものを見かけます。なんかソフトウェアの開発も漫画家さんやイラストレーターさんの活動と似てるなぁ〜と思ったりもします。ユーザからの評価が無いとモチベーションが上がらない。窓の杜さんで紹介されたときは飛んで喜びましたけど。

不満や不評を発言した本人は特に気にしてないのかもしれないけど、作者からするとちょっとした一言の不満だけでもすごくダメージ受けるんです。上でも書きましたが「EasyWine 無能なんじゃ〜^」みたいな書き込みを見かけて TL を追ってみると大抵はその本人のミスや無知が原因だったりします。そこで何かアドバイスでもすればいいんでしょうが器の小さい自分は「なんや、自分のせいやん」と思ってしまうのですね。Twitter って怖い!

この辺は会社やチームで開発してると違うのかもしれませんが、ソロで開発していると不満を言う相手も居ないので「作者にダイレクトアタック!」な感じにモロにダメージを受けます。いまはスマホが普及しているのでアプリなんて世の中に山程ありますし、アプリストアのレビューで不満や罵声を見かけるのも当たり前のような時代ですが、私はそういう耐性が無い人間だったということです。

あと、何度か言ってますが私は Linux ユーザなので WindowsmacOS を切り捨てています。これは冗談ではなく、実際に私の内ではWindowsmacOS といったものは既に「オペレーションシステム」ではなく VM や Docker のコンテナのように作っては壊す「ただの実験場」のひとつに過ぎないのです。

自分が Mac を使い始めた Snow Leopard の頃は Mac のパッケージ管理ソフトは FinkMacPorts くらいでした。MacPorts は基本ソースコードからのビルドなので当時の PC スペックでは Wine が使えるようになるまで数時間かかりました。しかし、いまは Homebrew を使えば Wine の導入は困難ではないでしょう。実際、この前の検証では 30 分もあれば終わりました。何かあったとしても Homebrew のフォーラムでサポートが受けられるでしょう。

MikuInstaller、Wineskin、Winebottler などなどいろいろな派生アプリケーションが生まれては開発が止まっていきました(久々に見たら Winebottler 更新されてた)。EasyWine も NXWine の頃から数えるともう 6 年以上でしょうか。一般的なソフトウェアの開発と言えるような立派な開発はしてきませんでしたが、個人で無償でやっていくにはなかなか難しいものになってきました。

無償が厳しいという部分に関しては Patreon やら FANBOX などのクリエーター支援サービスでソフトウェアも公開できるのか?という疑問が解決できればなんとかなるかもしれません。一応 GitHub Sponsor は有効にしたけど肝心のスポンサー側がまだベータなんですよね。

最新のソースコードは下記に置いてあります。Xcode 8.3.3 が扱える Mojave 以前の macOS なら依存関係のソースコードやツールを集めればどの環境でもセルフビルドできるはずです。ブランチは Wine 4 系で切っているのでそのうち master にマージするかもしれません。

https://github.com/mattintosh4/compact-wine/tree/wine-4.xgithub.com

工程は下記のようになります。

コンパイルとパッケージング関係は `build.sh` ですべて自動化しているので特に何かする必要はありません。マシンのスペックによりますが、すべてコンパイルするには数時間かかりますので再試行のために ccache を使うことを推奨します。


これまでの感謝の気持ちというかお詫びというわけでもないですが、先日発行した同人誌の中から Homebrew と Wine のインストール、簡易的な文字化け対策までの部分を無償公開しておきます。印刷費の関係でかなり割愛してますが、Wine の導入だけならこれで十分だと思います。

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Homebrew のインストール

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Wine のインストール

質問回答

現在使っている EasyWine はそのまま使えますか?

はい。そのままお使いいただいてかまいません。EasyWine にはアクティベーションのような機能は実装されていませんのでこちらからロックしたりするということもありません。ただし、ディスクイメージの再入手はできなくなりますので手元に保管してください。

自作のアプリケーションやゲームに EasyWine が必要です!

別途ご相談ください。個人や同人で Windows ゲームなどを制作されている方で「Mac を使っている人にも遊んでもらいたい」、「Mac だけど同人ゲームを楽しみたい」というようなご要望があればそれは相談に応じるかもしれません(あくまで「かも」なので信用はしないでください)。

ゲームを製作されている方向けの話ですが、EasyWine は RPG ツクール 2000 などのゲーム用に最適化していないため個別に対応する方がパフォーマンスやフォント周りの最適化が出来ると思います。

DM は送られても無視している可能性があるのでパブリックでご連絡ください。機密情報が含まれる場合は DM でもかまいませんが、反応が遅れるかもしれません。

今後、Wine の更新はできますか?

EasyWine はベースである Nihonshu をラッピングしているだけなのでファイルの差し替えだけで Wine を更新することができます。Nihonshu についてはいまのところ今後も更新していく予定です。

macOS Catalina には対応しませんか?

いい加減に(ry 2020 年 09 月 28 日に Catalina 対応版をリリースしました

mattintosh.hatenablog.com

以上が頒布休止に関するお話です。

いずれ何らかのかたちで利益を得られるようであれば頒布を再開するかもしれませんし、技術書典やコミックマーケットなどのイベント限定で頒布したりするかもしれません。

今後は CrossOver や Homebrew の利用をご検討ください。

追記

再販するにあたって有料化しました。有料化の経緯については下記をご覧ください。

www.pixiv.net